-
労働者を雇い入れる場合、労働条件は口頭で十分説明すれば、特に書面を交付しなくても構いませんか?
-
1.労働契約の期間、2.就業の場所・従事する業務の内容、3.始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項、4.賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払いの時期に関する事項、5.退職に関する事項(解雇の事由を含む)については、「書面」の交付が必要です。(労働基準法第15条)
なお、パートタイム労働者を雇用する際にも同様に労働条件を明示する必要があります。
-
労働契約の期間を2年間として問題ありませんか?
-
従来、労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、1年を超える期間については締結できませんでしたが、法律改正により、平成16年1月1日から、契約期間を「3年以内」とする労働契約の締結が可能となりました。また、専門的な知識、技術又は経験(専門的知識等)であって、高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当するものを有する労働者がそのような専門的知識等を必要とする業務に就く場合や満60歳以上の労働者との間で締結する労働契約については、契約期間を「5年以内」とすることができるようになりました。(労働基準法14条)
-
労働者を雇い入れるときに、「3年以内に退職した場合は、会社に対し50万円を支払うこと」を内容とする労働契約を結んでもいいですか?
-
労働契約の締結に関し、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定することは禁止されています。(労働基準法第16条)
-
新聞・雑誌の求人広告に表示してあった日給額を見て入社したところ、実際には広告の日給額より少ない金額で計算されていました。差額を会社に請求することは可能でしょうか?
-
求人広告は、あくまでも募集のために行われるものであり、広告の中身がそのまま労働契約の内容になるものではありません。実際の判例でも、「求人広告に記載された基本給額は見込額であり、最低額の支給を保障したわけではなく、将来入社時までに確定されることが予定された目標としての金額である」としており、求人広告記載の労働条件と、労使で合意した労働契約の内容が異なる場合に、労働契約の内容が優先されるとしています。ただし、使用者は、雇い入れ時に、賃金や労働時間等の労働条件について、書面を交付する方法で労働者に明示しなければならず、その明示された労働条件が、事実と異なる場合は、労働者は即時に労働契約を解除できる旨が、労働基準法に定められています。また、判例等では、定められた労働条件は、正当な理由がなければ、労働者にとって不利益に変更することはできないこととされています。(労働基準法第16条)
-
労基法は、働く人みんなに適用されるのですか?
-
労基法は、原則として、日本国内で労働者として働いている人であれば、勤めている企業の種類やその就業形態等を問わず、すべての人に適用されます。
- 労基法が適用されない労働者
-
次の者又は事業には労基法の一部あるいは全部が適用されません。
-
船員法1.1に規定する船員(労基法116-1)
船員には、労基法の特別法たる船員法が適用されます。ただし、労基法の原則や定義を定めた総則や罰則を定めた規定等は適用されます。 -
同居の親族のみを使用する事業(労基法116-2)
- 親族とは、民法725にいう、六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族をいいます。
- 同居とは、同一の家屋に住んでいるということだけではなく、実質的に世帯たる実態があるか否か、すなわち居住及び生計を一にしているか否かで判断されます。
- 他人を一人でも雇用すれば、労基法が適用されます。その場合、同居の親族であっても、就労実態が他の労働者と同様であれば、労働者と解されることがあります(S54.04.02基発153)。
-
家事使用人(労基法116-2)
家事使用人であるか否かは、従事する作業の種類・性質の如何等を勘案して具体的に当該労働者の就業実態により決定されます。- 法人に雇われたが、その役職員の家庭で家事一般に従事している者は家事使用人に当たります(S63.3.14基発150・婦発47)。
- 個人家庭の家事を請け負う者に雇われて、その指揮命令の下で家事に従事する者は家事使用人には当たりません(前同)。
- 個人開業医の見習い看護婦、旅館の女性従業員、個人事業の見習い・内弟子などが「家事に従事する」あるいは「事業を手伝う」などの場合は、「どちらが本来の業務か」によって判断されます(S24.04.13基収886)。
-
一般職(特定独立行政法人の職員を除く)、特別職(裁判所職員(裁判官及び裁判官の秘書官を除く)・国会職員・防衛省の職員)の国家公務員
労基法の適用はありません(労基法112、S63.03.14基発150・婦発47、H25.6.13基発0613第1号)。 -
一般職の地方公務員
労基法の一部規定についての適用除外があります(同上)。
-
船員法1.1に規定する船員(労基法116-1)
- 国外や外国企業での適用関係
-
-
商社・銀行等の国外支店・出張所など
- 労基法は行政取締法規であり、国内にある事業にのみ適用されます(属地主義)。
- 国外の作業場が事業としての実態を備えている場合には、労基法は適用されません。しかし、国外の作業場が独立した事業としての実態がなく国内の業者の指揮下にある場合には、国外の事業も含めて労基法が適用されます(S25.08.24基発776)。ただし、現地にいて労基法違反を犯した者は処罰の対象とはならず、国内の使用者に責任がある場合にはその者が処罰の対象となります(前同)。なお、罰則は適用されなくても、民事上の責任は追及できる場合はあります(前同)。
- 海外出張者については、労基法が適用されます。
-
外国人、外国人が経営する会社、外国籍の会社
- 外国人であっても日本の国内の事業場で働く労働者であれば、労基法は全面的に適用されます。
- 外国人が経営する会社、外国籍の会社であっても日本国内に所在する事業場であれば労基法が適用されます。
なお、外交特権を有する外交官等には、原則として裁判権は及びません(S43.10.09基収4194)。
-
商社・銀行等の国外支店・出張所など
- 労働者に該当するか否か
-
働いている人であっても、個人事業主、会社の役員、請負契約や委任契約で働いている人など労基法上の労働者に該当しない人には、労基法の適用はありません。しかしながら、労働者に該当するか否かは実体判断とされており、契約の形式が請負や委任などとなっていても、実体的に労働関係が認められれば、労基法の適用がある労働者に該当します。
労基法9では「この法律で『労働者』とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と定義されており、労働者であるか否かは、基本的には、事業に「使用される者」であるか否か、その対償として「賃金」が支払われているか否かによって判断されます。しかし、現実的にはこの判断が難しい場合があり、その場合には、労務提供の形態や報酬の労務対償性及びこれらに関連する諸要素をも勘案して総合的に判断することが必要です。この基本的な判断基準は労働基準法研究会報告「労働基準法の『労働者』の判断基準について」(S60・12・19)により整理されています。
-
内定を取り消されたとき、辞退するときは、どのような点に気をつければよいのでしょうか?
-
採用内定について法的な定義はなく、また態様も様々ですが、一般的には、労働者と使用者との間で一定の始期を付して労働契約を締結した場合を言うものと考えられます。
採用内定の状態になれば、すでに、労働者と使用者との間に一定の労働契約が成立しているので、使用者から内定を取り消されたり、または、労働者から内定を辞退することは、一方的な契約破棄になります。内定取消の場合には、解雇としての合理的な理由が必要ですから(労契法16)、労働者とすれば、その理由を開示してもらう必要があります。一方、内定者側からの内定辞退は、基本的に問題ないものの、それがあまりに信義則に反するような場合は、損害賠償を求められる可能性もあり得るので、不誠実と言えないか否かについて考えておかなければなりません。- 採用内定
- 採用内定の法的性格は事案により異なりますが、採用内定通知のほかには労働契約締結のため特段の意思表示をすることが予定されていない場合には、採用内定により始期付解約権留保付労働契約が成立したと認められます。そのため、採用内定取消は解雇に当たり、労契法16の解雇権の濫用についての規定が適用され、「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合」には、権利を濫用したものとして解雇(採用内定取消)は無効となります。
- 解雇としての合理的な理由
-
採用内定取消が解雇として有効とされるのは、原則的には(1)採用内定の取消事由が、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であること、(2)この事実を理由として採用内定を取り消すことが、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる場合に限られると考えられます(労契法16)。
具体的に考えられる内定の取消事由としては、i契約の前提となる条件や資格の要件を満たさないとき、ii健康状態の悪化、iii重要な経歴詐称、iv重要な必要書類を提出しないこと、vその他の不適格事由などが考えられます。さらに、経営状況の悪化による採用内定取消も考えられます。この場合については、基本的に整理解雇の場合に準じ、いわゆる整理解雇の4要素、すなわち(1)人員整理の必要性、(2)解雇回避の努力義務、(3)解雇対象者の選定の合理性、(4)手続きの妥当性、を踏まえて、その有効性が判断されることになると考えられます。 - 学生・労働者側からの内定辞退
- 内定取消は使用者側の行為ですが、内定辞退は学生・労働者側からの行為になります。内定辞退の場合にはすでに労働契約は成立しているものの、民法の規定により、雇用の期間を定めなかったときはいつでも解約できる、とされているので、あまりに信義則に反するような場合は法的責任を問われる場合もありますが、基本的には認められます。ただし、労働契約を解約することはできても、それを根拠に損害賠償を求められる可能性はあります(なお、損害額と内定辞退の因果関係を立証することは難しく、立証できても大きな金額とはならないので、実際に損害賠償を求めた判例は見当たりません)。
- 行政による規制
-
-
採用内定についての労基法の適用
採用内定によって労働契約が成立していると認められれば、採用内定取消が解雇とみなされ、解雇予告等について規定する労基法20の解雇予告が適用される場合があります(※)。
(※)採用内定者は、いまだ具体的な就労義務を負うことなく、賃金も支払われていないということから、労基法の適用を否定する裁判例もあります。 -
ハローワークによる指導
採用内定取消事案については、ハローワークによる一元的把握を行い、企業に対する指導をするとともに、採用内定取消の内容が一定の場合(※)に該当するときは、学生生徒等の適切な職業選択に資するため、その内容を公表することができることとされています。
(※)- 2年度以上連続して行われたもの。
- 同一年度内において10名以上の者に対して行われたもの。
(内定取消の対象となった新規学校卒業者の安定した雇用を確保するための措置を講じ、これらの者の安定した雇用を速やかに確保した場合を除く) - 事業活動の縮小を余儀なくされているものとは明らかに認められないときに、行われたもの。
- 内定取消の対象となった新規学校卒業者に対して、内定取消を行わざるを得ない理由について十分な説明を行わなかったとき。
- 内定取消の対象となった新規学校卒業者の就職先の確保に向けた支援を行わなかったとき。
-
採用内定についての労基法の適用
-
現在の法定労働時間は、何時間ですか?
-
原則として、休憩時間を除いて、1日8時間、1週40時間以下となっております(労働基準法第32条)。ただし、労働者数10人未満の商業、映画・演劇業、保健衛生業及び接客娯楽業(特例対象事業)は、1週44時間以下となっております(労働基準法第40条)。
-
現在、所定労働時間の見直しを考えている会社経営者ですが、1日の所定労働時間を8時間20分とすることはできますか?
-
「変形労働時間制」を採用すれば可能です。変形労働時間制には、(1)1ヶ月単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の2)、(2)1年単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の4)、(3)1週間単位の非定型的変形労働時間制(労働基準法第32条の5)があります。「変形労働時間制」とは、簡単に説明しますと、勤務日・勤務時間を特定すること等によって、変形期間を通じ平均して1週の労働時間を法定労働時間以下にする制度です。
-
私の会社では「フレックスタイム制」も視野に入れた労働時間の見直しを考えています。そこでフレックスタイム制について教えてください。
-
フレックスタイム制とは、1ヶ月以内の一定の期間の総労働時間を定め、労働者にその範囲内で各日の始業及び終業の時刻を委ねて働く制度です。フレックスタイム制を採用する場合は、就業規則その他これに準ずるものに一定の定めを設けるとともに、書面により労使協定を締結しなければなりません。協定する項目は、次のとおりです((5)、(6)は設定する場合に限ります)。
- 対象となる労働者の範囲
- 清算期間
- 清算期間における総労働時間
- 標準となる1日の労働時間
- コアタイム
- フレキシブルタイム
-
「休日」は、最低何日与える必要がありますか?
-
毎週少なくとも1回、または4週間で4日以上与えることが必要です。(労働基準法第35条)
-
「休日」とは、継続24時間の休息と考えてよろしいですか?
-
労働基準法上、労働者に与えなければならない「休日」とは、原則として「暦日」単位であり、午前0時から午後12時までの24時間を言います。午前0時から午後12時までの間に勤務しない場合が休日であり、所定休日とされている場合でも、前日の労働が延長されて午前0時を超えた場合などは、休日を与えたことにはなりません。ただし、番方編成による交代制勤務の場合には、例外的に継続24時間をもって休日と認められる場合があります。(労働基準法第35条)
-
「休憩時間」は、最低何分与える必要がありますか?
-
労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、労働時間が8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を労働時間の途中に与えることが必要です。(労働基準法第34条)
-
休憩時間は、従業員に一斉に与える必要があると聞いたことがありますが、現在でもそうなっているのでしょうか?
-
休憩は、全従業員に一斉に付与することが原則ですが、労使協定を締結すること(運輸交通業、商業、保健衛生業、接客娯楽業等の特定の業種については不要です)により、一斉付与は適用除外となります。(労働基準法第34条)
-
「1ヶ月単位の変形労働時間制」を採用するための要件を教えてください。
-
1ヶ月単位の変形労働時間制を採用するには、就業規則・就業規則に準じるもの(規模10人未満の事業場に限る)・労使協定のいずれかにおいて、(1)変形期間と各変形期間の起算日、(2)対象となる労働者の範囲、(3)変形期間中の各日、各週の所定労働時間を定める必要があり、労働者への周知も義務付けられています。また、労使協定の場合、有効期間の定めも必要です。そして、労使協定は、様式第3号の2に記載して所轄労働基準監督署長に届出を行う必要があります。
なお、規模10人以上の事業場であれば、労働時間に関する事項に変更があった場合は、就業規則変更届が必要となることにも注意してください。(労働基準法第32条の2)
-
当社は、1日8時間、年間休日110日となっていますので、1年を平均すると週40時間制をクリアしていると考えていますが、何か手続きが必要ですか?
-
単位の変形労働時間制を採用するためには、労使協定により、(1)対象労働者の範囲、(2)対象期間、(3)特定期間、(4)対象期間における労働日及び労働日ごとの労働時間、(5)有効期間について定めをし、この内容を様式第4号に記載して所轄労働基準監督署長に届出を行う必要があります。(労働基準法第32条の4)
-
「1年単位の変形労働時間制」で、業務の繁忙期に長めの所定労働時間を組みたいのですが、注意すべき点を教えてください。
-
1年単位の変形労働時間制における所定労働時間には、原則として1日10時間、1週52時間という限度時間が定められています。ただし、対象期間が3ヶ月を超える場合は、次の要件を満たす必要があります。
- 週48時間を超える所定労働時間を設定した週は連続3週以内であること。
- 対象期間を起算日から3ヶ月毎に区切った各期間に、週48時間を超える所定労働時間を設定した週の初日の数が3以内であること。(労働基準法第32条の4)
-
「1年単位の変形労働時間制」による労働日数の限度は何日ですか。また、最大何日まで連続して労働させてもよいのですか?
-
対象期間内の労働日数の限度は、原則として1年当たり280日です。また、対象期間に連続して労働させることができる日数は6日間で、労使協定で定めた特定期間においては1週間に1日の休日が確保できる日数となっています。(労働基準法第32条の4)
-
「1年単位の変形労働時間制」でも休日の振替を行うことはできますか?
-
業務の繁閑等を理由として休日振替を頻繁に行わなければならない場合は、1年単位の変形労働時間制を採用できません。労働日の特定時に予期しない事情が生じ、やむを得ず休日の振替を行う場合には、(1)就業規則で休日の振替がある旨の規程を設け、あらかじめ休日を振り替えるべき日を特定して振り替えること、(2)対象期間(特定期間を除く)において、連続労働日数が6日以内となること、(3)特定期間においては、1週間に1日の休日が確保できる範囲内にあることが必要です。また、例えば、同一週内で休日をあらかじめ8時間を超えて労働を行わせることとして特定していた日と振り替えた場合については、当初の休日は労働日として特定されていなかったものであり、労働基準法第32条の4第1項に照らし、当該日に8時間を超える労働を行わせることとなった場合には、その超える時間については時間外労働とすることが必要です。
-
アルバイト先では、朝8時から夕方の18時まで、お昼休みもなく1日10時間働いています。問題はないのでしょうか?
-
1日の労働時間が6時間を超える場合においては45分以上、8時間を超える場合においては1時間以上の休憩時間を、労働時間の途中に、原則として一斉に与えなければならないと定められています(労基法34-1)。あなたの1日の労働時間は10時間ですので、休憩時間を与えられていないことは労働基準法に違反します。なお、例えば10時から15時までの1日5時間勤務など、1日の労働時間が6時間未満の場合には、休憩時間が与えられていなくても労働基準法には違反しませんので、注意してください。
- 一斉休憩付与の例外
-
休憩時間の一斉付与の原則には、以下の2つの例外があります。
-
特定の業種
運輸交通業、商業、金融・広告業、映画・演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署の事業の労働者については、一斉に休憩を与えなくてもよいと定められています(労基法40、労基則31)。 -
労使協定
上記(1)の業種以外の事業の労働者については、使用者と労働者の過半数で組織する労働組合、又は労働者の過半数で組織する労働組合がなく、労働者の過半数を代表する者との間で、書面による協定を締結した場合には、一斉に休憩を与えなくてもよいと定められています(労基法34-2)。
-
特定の業種
-
年次有給休暇はもらえるのですか?また、パートももらえるのでしょうか?
-
年次有給休暇とは、労働者の心身の疲労を回復させ、また、仕事と生活の調和を図るために、労基法が労働者の「権利」として認めた有給の休暇です。年次有給休暇は、(1)6ヶ月以上継続勤務している者であって、(2)その期間において全労働日の8割以上出勤したものであれば、10日の有給休暇がとれます。以後、出勤率が8割以上であれば、継続勤務期間1年ごとに休暇日数は増加し最高20日を限度にとることができます。所定労働日数が少ないパートタイム労働者であっても、その所定労働日数に応じて年次有給休暇をとることができます。
- 基本的な考え方
-
-
年次有給休暇は労働者の権利
年次有給休暇は、法定の要件を満たせば当然に権利が発生するもので、労基法が保障する労働者の権利であります。仮に、使用者が労基法に規定された日数よりも少ない日数の年次有給休暇しか認めないとか、就業規則で年次有給休暇を認めないことを定めたとしても、それらは無効となり、労働者は、労基法が定めるとおりの年次有給休暇を取得することができます。ただし、年次有給休暇は、労働義務を免除するものであるので、労働義務のない日(所定休日や休業日など)に年次有給休暇をとることはできません。 -
就業規則に定める
年次有給休暇は、労基法が定めた「休暇」であり、「休暇」は就業規則の必要的記載事項(労基法89-1)とされています。常時10人以上の労働者を使用する事業場には、就業規則を作成して所轄労働基準監督署に届け出る義務があります(労基法89柱書)。 -
日単位でとることが原則
年次有給休暇は、継続し又は分割してこれをとることができることとされており、基本的にはその日1日労働から解放されて休養、リフレッシュすることを目的とするものであるから、日単位を最小単位とすることが原則です。したがって、例えば、年次有給休暇をとった日に急な仕事で呼び出され途中から会社に出勤したような場合には、年次有給休暇をとったことにはなりません。なお、労基法は、時間単位で休暇をとることも認めているが(労基法39-4)、あくまでも日単位による取得が原則であるため、その取得については一定要件が課せられています。
-
年休の使用目的は労働者の自由
年次有給休暇をどのような目的でとるのかは、労働者の自由であり、使用者は、その目的如何によって年次有給休暇の取得を拒むことはできません。
ただし、業務の正常な運営を阻害する目的で、一斉に年次有給休暇をとって職場を放棄することは、年次有給休暇に名を借りた同盟罷業であり、正当な権利行使ではないとされています(S48.3.6 基発110)
-
年次有給休暇は労働者の権利
- 年次有給休暇の発生要件と付与日数
-
(1)入社から6ヶ月間継続勤務し、(2)全労働日の8割以上出勤していれば、労働者は10労働日の年次有給休暇を取得することができます。また、その後1年間継続勤務し、その全労働日の8割以上出勤すると、11労働日の年次有給休暇を取得することができます。以降も同様の要件を満たせば、表1の日数の年次有給休暇が付与されます(勤続年数6年6ヶ月以降は20日)。なお、1年6ヶ月に8割未満の出勤率であったために11日の休暇権を取得できなかった場合でも、2年6ヶ月に8割以上の出勤率となれば、その翌年には12日の休暇権が取得できます。
また、休暇の権利は2年間有効なので、当該年度に使用しなかった休暇日数は翌年度に繰り越しとなります。表1 年次有給休暇の付与日数(一般の労働者) 勤続年数 6ヶ月 1年 6ヶ月 2年 6ヶ月 3年 6ヶ月 4年 6ヶ月 5年 6ヶ月 6年 6ヶ月
以上付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日 所定労働日数が通常の労働者より少ないパートタイム労働者は、表2の所定労働時間数や所定労働日数に応じて一定日数の年次有給休暇をとることができます。
なお、パートタイム労働者であっても、週所定労働時間数が30時間以上の場合や、所定労働日数が週5日(または年間217日)以上の場合は、表1の一般の労働者と同じ日数の年次有給休暇をとることができます。表2 年次有給休暇の付与日数(一般の労働者) 週所定
労働日数年間所定
労働日数勤続年数 6ヶ月 1年6ヶ月 2年6ヶ月 3年6ヶ月 4年6ヶ月 5年6ヶ月 6年6ヶ月 4日 169~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日 3日 121~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日 2日 73~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日 1日 48~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日 - 使用者の時季変更権
-
年次有給休暇の取得日は原則として、労働者が好きな時季を指定することができます。ただし、労働者が指定した時季に休暇を与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合」には、使用者は、他の時季に変えること(時季変更権)が認められています(労基法39-5)。
使用者の時季変更権の行使が認められる「事業の正常な運営を妨げる場合」かどうかは、個別的、具体的、客観的に判断されています(S23.07.27 基収2622)。裁判例では、労働者が所属する事業場を基準として、事業の規模、内容、労働者の担当する作業の内容、性質、作業の繁閑、代行者の配置の難易、労働慣行等諸般の事情を考慮して客観的に判断すべきものとされています。 - 年次有給休暇の賃金
-
年次有給休暇をとった日に支払う賃金は、(1)平均賃金 (労基法12-1)、(2)通常の賃金、(3)健康保険法による標準報酬日額(健保法99-1)のいずれかによることとされています。このうち、(3)による場合は、労使協定(届出は不要)を結ばなければなりません(労基法39-7)
これらのうちどの方法によって支払うかは、あらかじめ就業規則等に定めておく必要があり、使用者がその都度任意に選択することはできません。 - 出勤率の算定
-
年次有給休暇が付与される要件としての出勤率の算定に当たって、全労働日と出勤日の取り扱いは次によることとされています。
-
全労働日
次の日は全労働日から除外する日として取り扱われます。- 使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日(H25.7.10基発0710第3号)
- 労使いずれの責にも帰すべからざる不可抗力的事由による休業(H25.7.10基発0710第3号)
- 争議行為としてのロックアウト期間
- 正当なストライキその他の正当な争議行為により労務の提供が行われなかった日(H25.7.10基発0710第3号)
- 所定休日に働いた日
-
出勤日
次の日は出勤日として取り扱われます。- 遅刻、早退日
- 業務上の傷病により療養のため休業した期間(労基法39-8)
- 育介法に規定する育児休業又は介護休業をした期間(労基法39-8)
- 産前産後休業(労基法39-8)
- 裁判所の判決により解雇が無効と確定した場合や、労働委員会による救済命令を受けて会社が解雇の取消を行った場合の解雇日から復職日までの不就労日のように、労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日(H25.7.10基発0710第3号)
- 年次有給休暇を取得した日(S22.9.13基発17)
-
労使間の決定するところによるもの
- 就業規則で定められた慶弔休暇等
- 生理休暇
-
全労働日
-
年次有給休暇を時間単位でとれると聞きましたが、どうすればよいのでしょうか?
-
事業場で労使協定を結べば、年5日までの範囲で、時間単位の年次有給休暇(時間単位年休)をとることができます。※この労使協定は、監督署へ届け出る必要はありません。
- 労使協定で定める事項
-
時間単位年休を導入する際に、労使協定で定める事項は、次のとおりです(労基法39-4、労基則24条の4)。
- 対象労働者の範囲
- 時間単位年休の日数(年5日以内。前年度からの繰り越し分がある場合は、繰り越し分を含めて5日以内)
- 時間単位年休1日の時間数(1日の年次有給休暇が何時間分の時間単位年休に相当するか。1時間に満たない端数は1時間単位に繰り上げる)
- 1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数(2時間単位、4時間単位等の整数の時間単位で。ただし、1日の所定労働時間数と同じ、又はこれを上回ることはできません)。
- 対象労働者の範囲
- 利用目的によって時間単位年休の対象労働者の範囲を定めることはできません(H21.05.29 基発0529001号)。
- 時間単位年休の与え方の留意点
-
- 時間単位年休は、労働者が年次有給休暇をとりやすくするために一定要件の下で認められているものであって、1日単位で(1日まるまる)休むことが原則です。したがって、労働者が日単位の年次有給休暇を請求しているのに、使用者が時間単位で取得するように強制することはできません。
- 1時間に満たない単位(例えば30分単位など)で与えることはできません。
- 労働者から指定された時間帯に有給休暇を与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合」は、使用者は、他の日や時間帯に変える(時季変更権の行使)ことができます。しかし、単に「忙しいから」という使用者の主観的な理由だけでは、労働者からの時間単位年休の請求を拒めません。労働者が時間単位による取得を請求した場合に日単位に変更することや、日単位による取得を請求した場合に時間単位に変更することは、時季変更に当たらず、認められません。また、事業の正常な運営を妨げるか否かは、労働者からの具体的な請求について個別的、具体的に客観的に判断されるべきものであり、あらかじめ労使協定において時間単位年休を取得することができない時間帯を定めておくこと、所定労働時間の中途に時間単位年休を取得することを制限すること、一日において取得することができる時間単位年休の時間数を制限すること等は認められません(H21.5.29基発第0529001号)。
- 年の途中で所定労働時間数の変更があった場合
-
年の途中で所定労働時間数の変更があった場合には、時間単位の端数が残っている部分は、当該労働者の1日の所定労働時間の変動に比例して時間数が変更されることとなります。
例えば、所定労働時間が8時間から4時間に変更され、年休が3日と3時間残っている場合は、3日と3/8日残っていると考え、以下のとおりとなります。
【変更前】3日(1日当たりの時間数は8時間)と3時間
【変更後】3日(1日当たりの時間数は4時間)と2時間(比例して変更すると1.5時間となるが、1時間未満の端数は切り上げる)(H21.10.5基発1005第1号)
-
年次有給休暇をとると賞与の査定でマイナス評価にされてしまいます。有休をとらなかった人はその分多く働いたのだから当然と会社は言いますが、労基法上、問題はないでしょうか?
-
年次有給休暇は、労基法が保障する労働者の権利です。年次有給休暇をとることを賞与の査定でマイナス評価にすることは、労働者がその権利である年次有給休暇をとることを事実上抑制することになりますので、年次有給休暇をとる労働者に対する不利益な取り扱いとなります。
- 不利益取り扱いの禁止
-
労基法は、年次有給休暇をとった労働者に対して、使用者が賃金を減額したり、その他不利益な取り扱いをしないようにしなければならないことを定めています(労基法附則136)
例えば、精皆勤手当や賞与を算定する際に、年次有給休暇を欠勤扱いにすることなどが不利益取り扱いに当たります(S63.1.1 基発1)
この規定は、年次有給休暇をとった労働者に対する不利益取り扱いが年次有給休暇の取得を抑制し、労基法39条の精神に反することなどから、訓示規定として設けられたものです。精皆勤手当や賞与の減額などの程度によっては、公序良俗に反するものとして民事上無効(民法90)となる場合もあります。
-
改正高年齢者雇用安定法においては、事業主が高年齢者雇用確保措置として継続雇用制度を導入する場合には、希望者全員を対象とするものにしなければならないのですか?
-
事業主が高年齢者雇用確保措置として継続雇用制度を導入する場合には、希望者全員を対象とするものにしなければなりませんので、事業主が制度を運用する上で、労働者の意思が確認されることになると考えられます。
ただし、改正高年齢者雇用安定法が施行されるまで(平成25年3月31日)に労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた事業主については、経過措置として、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢以上の年齢の者について継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めることが認められています。
なお、心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないことなど、就業規則に定める解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く)に該当する場合には、継続雇用しないことができます。ただし、継続雇用しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられることに留意が必要です。(参考)老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢
平成25年4月1日から平成28年3月31日まで 61歳 平成28年4月1日から平成31年3月31日まで 62歳 平成31年4月1日から平成34年3月31日まで 63歳 平成34年4月1日から平成37年3月31日まで 64歳
-
当分の間、60歳に達する労働者がいない場合でも、継続雇用制度の導入等を行わなければならないのでしょうか?
-
高年齢者雇用安定法は、事業主に定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の高年齢者雇用確保措置を講じることを義務付けているため、当分の間、60歳以上の労働者が生じない企業であっても、65歳までの定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の措置を講じていなければなりません。
-
継続雇用制度を導入していなければ、60歳定年による退職は無効となるのですか?
-
高年齢者雇用安定法は、事業主に定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の高年齢者雇用確保措置を講じることを義務付けているものであり、個別の労働者の65歳までの雇用義務を課すものではありません。
したがって、継続雇用制度を導入していない60歳定年制の企業において、定年を理由として60歳で退職させたとしても、それが直ちに無効となるものではないと考えられますが、適切な継続雇用制度の導入等がなされていない事実を把握した場合には、高年齢者雇用安定法違反となりますので、公共職業安定所を通じて実態を調査し、必要に応じて、助言、指導、勧告、企業名の公表を行うこととなります。
-
継続雇用制度について、定年退職者を継続雇用するにあたり、いわゆる嘱託やパートなど、従来の労働条件を変更する形で雇用することは可能ですか。その場合、1年ごとに雇用契約を更新する形態でもいいのでしょうか?
-
継続雇用後の労働条件については、高年齢者の安定した雇用を確保するという高年齢者雇用安定法の趣旨を踏まえたものであれば、最低賃金などの雇用に関するルールの範囲内で、フルタイム、パートタイムなどの労働時間、賃金、待遇などに関して、事業主と労働者の間で決めることができます。
1年ごとに雇用契約を更新する形態については、高年齢者雇用安定法の趣旨にかんがみれば、年齢のみを理由として65歳前に雇用を終了させるような制度は適当ではないと考えられます。
したがって、この場合は、
[1]65歳を下回る上限年齢が設定されていないこと
[2]65歳までは、原則として契約が更新されること(ただし、能力など年齢以外を理由として契約を更新しないことは認められます)が必要であると考えられますが、個別の事例に応じて具体的に判断されることとなります。
-
例えば55歳の時点で、
[1]従前と同等の労働条件で60歳定年で退職
[2]55歳以降の労働条件を変更した上で、65歳まで継続して働き続ける
のいずれかを労働者本人の自由意思により選択するという制度を導入した場合、継続雇用制度を導入したということでよいのでしょうか? -
高年齢者が希望すれば、65歳まで安定した雇用が確保される仕組みであれば、継続雇用制度を導入していると解釈されるので差し支えありません。
-
例えば55歳の時点で、
[1]従前と同等の労働条件で60歳定年で退職
[2]55歳以降の雇用形態を、65歳を上限とする1年更新の有期労働契約に変更し、55歳以降の労働条件を変更した上で、最大65歳まで働き続ける
のいずれかを労働者本人の自由意思により選択するという制度を導入した場合、継続雇用制度を導入したということでよいのでしょうか? -
高年齢者が希望すれば、65歳まで安定した雇用が確保される仕組みであれば、継続雇用制度を導入していると解釈されるので差し支えありません。なお、1年ごとに雇用契約を更新する形態については、高年齢者雇用安定法の趣旨にかんがみれば、65歳までは、高年齢者が希望すれば、原則として契約が更新されることが必要です。個々のケースにおいて、高年齢者雇用安定法の趣旨に合致しているか否かは、更新条件がいかなる内容であるかなど個別の事例に応じて具体的に判断されることとなります。
-
継続雇用制度として、再雇用する制度を導入する場合、実際に再雇用する日について、定年退職日から1日の空白があってもだめなのでしょうか?
-
継続雇用制度は、定年後も引き続き雇用する制度ですが、雇用管理の事務手続上等の必要性から、定年退職日の翌日から雇用する制度となっていないことをもって、直ちに法に違反するとまではいえないと考えており、このような制度も「継続雇用制度」として取り扱うことは差し支えありません。ただし、定年後相当期間をおいて再雇用する場合には、「継続雇用制度」といえない場合もあります。
-
本人と事業主の間で賃金と労働時間の条件が合意できず、継続雇用を拒否した場合も違反になるのですか?
-
高年齢者雇用安定法が求めているのは、継続雇用制度の導入であって、事業主に定年退職者の希望に合致した労働条件での雇用を義務付けるものではなく、事業主の合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば、労働者と事業主との間で労働条件等についての合意が得られず、結果的に労働者が継続雇用されることを拒否したとしても、高年齢者雇用安定法違反となるものではありません。
-
当社で導入する継続雇用制度では、定年後の就労形態をいわゆるワークシェアリングとし、それぞれ週3日勤務で概ね2人で1人分の業務を担当することを予定していますが、このような継続雇用制度でも高年齢者雇用安定法の雇用確保措置として認められますか?
-
高年齢者の雇用の安定を確保するという高年齢者雇用安定法の趣旨を踏まえたものであり、事業主の合理的な裁量の範囲の条件であれば、定年後の就労形態をいわゆるワークシェアリングとし、勤務日数や勤務時間を弾力的に設定することは差し支えないと考えられます。
-
有期契約労働者に関して、就業規則等に一定の年齢(60歳)に達した日以後は契約の更新をしない旨の定めをしている事業主は、有期契約労働者を対象とした継続雇用制度の導入等を行わなければ、高年齢者雇用安定法第9条違反となるのですか?
-
高年齢者雇用安定法第9条は、主として期間の定めのない労働者に対する継続雇用制度の導入等を求めているため、有期労働契約のように、本来、年齢とは関係なく、一定の期間の経過により契約終了となるものは、別の問題であると考えられます。
ただし、有期契約労働者に関して、就業規則等に一定の年齢に達した日以後は契約の更新をしない旨の定めをしている場合は、有期労働契約であっても反復継続して契約を更新することが前提となっていることが多いと考えられ、反復継続して契約の更新がなされているときには、期間の定めのない雇用とみなされることがあります。これにより、定年の定めをしているものと解されることがあり、その場合には、65歳を下回る年齢に達した日以後は契約しない旨の定めは、高年齢者雇用安定法第9条違反であると解されます。したがって、有期契約労働者に対する雇い止めの年齢についても、高年齢者雇用安定法第9条の趣旨を踏まえ、段階的に引上げていくことなど、高年齢者雇用確保措置を講じていくことが望ましいと考えられます。
-
最低賃金制度とは?
-
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。
したがって、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。また、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められ、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。
(参考)最低賃金法(昭和34年4月15日法律第137号)(抄)第4条第1項 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。 第4条第2項 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。
-
最低賃金の種類は?
-
最低賃金には、地域別最低賃金と特定最低賃金の2種類があります。
-
地域別最低賃金
地域別最低賃金は、産業や職種に関わりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金として、各都道府県に1つずつ、全部で47件の最低賃金が定められています。なお、地域別最低賃金は、[1] 労働者の生計費、[2] 労働者の賃金、[3] 通常の事業の賃金支払能力を総合的に勘案して定めるものとされており、労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮することとされています。 -
特定最低賃金
特定最低賃金は、特定の産業について設定されている最低賃金です。関係労使の申出に基づき最低賃金審議会の調査審議を経て、同審議会が地域別最低賃金よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認めた産業について設定されています。全国で242件(平成25年4月12日現在)の最低賃金が定められています。この242件のうち、241件は各都道府県内の特定の産業について決定されており、1件は全国単位で決められています(全国非金属鉱業最低賃金)。
-
地域別最低賃金
-
最低賃金の適用される労働者の範囲は?
-
地域別最低賃金は、産業や職種に関わりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます(パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託などの雇用形態や呼称の如何を問わず、すべての労働者に適用されます)。
特定最低賃金は、特定地域内の特定の産業の基幹的労働者とその使用者に適用されます(18歳未満又は65歳以上の方、雇い入れ後一定期間未満で技能習得中の方、その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する方などには適用されません)。
なお、一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に、最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれなどがあるため、次の労働者については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の減額の特例が認められています。
- 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
- 試の使用期間中の方
- 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
- 軽易な業務に従事する方
- 断続的労働に従事する方
-
最低賃金額以上かどうかを確認する方法は?
-
支払われる賃金が最低賃金額以上となっているかどうかを調べるには、最低賃金の対象となる賃金額と適用される最低賃金額を以下の方法で比較します。
-
時間給制の場合
時間給≧最低賃金額(時間額) - 日給制の場合 日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、日給≧最低賃金額(日額)
- 月給制の場合 月給÷1ヶ月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
- 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合 出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較します。
-
上記(1)、(2)、(3)、(4)の組み合わせの場合
例えば、基本給が日給制で、各手当(職務手当など)が月給制などの場合は、それぞれ上記(2)、(3)の式により時間額に換算し、それを合計したものと最低賃金額(時間額)を比較します。
-
時間給制の場合
-
年俸制の場合には、何時間残業しても割増賃金はもらえないのですか?
-
年俸制を導入した場合でも、実際の労働時間が一週又は一日の労働時間の法定労働時間を超えれば、原則として※、割増賃金を支払わなければなりません。
※「原則として」とあるのは、労基法41条により、以下の労働者には、労働時間、休憩及び休日に関する規定が適用されないためです。
- 土地の耕作もしくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取もしくは伐採の事業その他農林の事業(林業を除く)または動物の飼育又は水産動植物の採捕もしくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業に従事する者
- 事業の種類に関わらず監督もしくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
- 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
- 時間外手当の支給が原則であること
-
労基法37は、労基法32から32の5までもしくは労基法40の労働時間を超える時間の労働、労基法35の休日における労働又は深夜の労働に対して、割増賃金を支払うべきことを使用者に義務付けることによって、労基法が規定する法定労働時間及び週休制の原則の維持を図るとともに、過重な労働に対する労働者への補償を行おうとするものであって、賃金の決定の方法如何に関わらず、時間外、休日又は深夜の労働に対する割増賃金を支払わなければなりません。
なお、当然のことながら、労基法36-1の協定によらない違法な時間外、休日労働であっても割増賃金を支払わなければなりません(S63.3.14 基発150、H11.3.31 基発168)。
これに関する判例として「小島撚糸事件」最高一小、判決、S35.07.14があり、その要旨は「労基法119条1号の罰則は、時間外労働等が適法たると違法たるとを問わず適用あるものと解すべきは条理上当然である」となっています。
また、労基法37は強行規定であり、たとえ労使合意の上で割増賃金を支払わない申し合わせをしても、労基法37に抵触し、その申し合わせは無効となり、時間外、休日又は深夜の労働に対する割増賃金を支払わなければなりません(S24.1.10 基収68)。 - 割増賃金の算定基礎額と年俸制
-
労基法37-5では、「割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は参入しない」とし、労基則21では、家族手当及び通勤手当のほか、以下の5つの手当や賃金を割増賃金の基礎となる賃金には算入しないと規定しています。
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
- [1]年俸額の12分の1を月例給与として支給する
- [2]年俸額の一部を賞与支給時に支給するもの(例えば、年俸の17分の1を、月例給与として支給し、年俸の17分の5を二分して、6月と12月に賞与として支給する)
問題は[2]の場合の賞与時の支給額が、割増賃金の算定基礎額に含まれるか否かですが、この点に関しては、[2]のような場合に「賞与として支払われている賃金は、労基則21条4号の『臨時に支払われた賃金』及び同条5号の『1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金』のいずれにも該当しないものであるから、割増賃金の算定基礎から除外できない」との通達(H12.3.08 基収78)があり、賞与時支給部分を含めて確定した年俸額を算定の基礎として割増賃金を支払う必要があります。
これに関する裁判例として「創栄コンサルタント事件」大阪高裁、判決、H14.11.26があります。
また、労使の合意で年俸に割増賃金を含むものとしている場合の取り扱いについて、「年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが労働契約の内容であることが明らかであって、割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区分することができ、かつ、割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上支払われている場合は労基法37条に違反しないと解されるが、年間の割増賃金相当額に対応する時間数を超えて時間外労働等を行わせ、かつ、当該時間数に対応する割増賃金が支払われていない場合は、労基法37条違反となることに留意されたい。また、あらかじめ、年間の割増賃金相当額を各月均等に支払うこととしている場合において、各月ごとに支払われている割増賃金相当額が、各月の時間外労働等の時間数に基づいて計算した割増賃金額に満たない場合も、同条違反となることに留意されたい」との通達(H12.3.08 基収78)があります。
-
18時から24時まで時給900円のアルバイトとして働いています。22時から24時までは深夜割増しになるのではないでしょうか?
-
労基法37-4は、「使用者が、午後10時から午前5時までの間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」と規定しています。
この割増率は深夜時間に労働させることに対して付加されるものですので、所定の労働時間が深夜に及んだ場合には、当然、
時間給+「深夜労働(時給)に対する2割5分以上」の割増率で割増賃金の支払い
を受けることになります。
したがって、22時以降の労働に対しては、一時間当たり1,125円(900円+225円)は支払われることになります。- 深夜時間に割増賃金を支払わなければならない理由
-
深夜の割増賃金は、労働時間の位置が深夜であるという時刻であることに基づき、その労働の強度等に対する労働者への補償として、その支払いが要求されるものです。
なお、労基法は強行規定であり、たとえ労使合意の上で割増賃金を支払わない申し合わせをしても、労基法37条に抵触し、その申し合わせは無効となり、深夜の労働に対する割増賃金を支払わなければなりません(S24.01.10 基収68)。また、4で触れる深夜労働を禁止されている年少者に違法な深夜労働をさせた場合にも、深夜の割増賃金は支払わなければなりません。 - 深夜時間の変更
- 労基法37-4では、括弧書で、「厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで」を深夜時間とすることができると規定していますが、従来、この規定により地域又は期間が指定されたことはありません。
- 労働条件の明示
- 労基法15では、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない」と規定し、労基則5では、賃金(時給)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期については、使用者が労働者に書面で示すこととされています。この賃金の決定、支払の方法には、深夜割増賃金の割増率や支給額が含まれますので、労働契約締結時に書面で明示するよう求めてください。
- 深夜業の禁止
- 労基法61では、満18歳に満たない者の午後10時から午前5時までの使用を禁止しています(交替制によって使用する満16才以上の男性については、この限りではありません)ので、満18歳未満の人は年齢を偽るなどして深夜に労働をすることのないようにしてください。
- 最低賃金
- 最低賃金法では、労基法が適用される労働者には、時間によって定められた最低賃金以上の額の支払を使用者に義務付けています(最賃法3、4)。この最低賃金は一定の地域ごとに決定されることとなっていますが、現在、都道府県ごとに決定されており、毎年、改定されています(最賃法10)。最低賃金法では、労働契約で最低賃金に達しない賃金を定めた場合には、その部分は無効となり、この場合には、無効なった部分は、最低賃金と同様の定めをしたものとみなされます(最賃法4-2)。新たにアルバイトとして働こうとしている方やアルバイトの契約を更新しようとしている場合には、最低賃金についてチェックしておくことが大切です。
-
ストレスチェック制度により、労働者がうつ病か否かが事業者に把握されてしまうのでしょうか?
-
ストレスチェック制度(ストレスチェック及び面接指導)は、労働者のストレスの程度を把握することにより、労働者自身のストレスへの気付きを促すとともに、職場改善につなげていく一次予防を主な目的とした制度であり、精神疾患の早期発見を行うことを一義的な目的とした制度ではありません。このため、ストレスチェックの内容も、あくまで労働者のストレスの程度を把握するための内容とする予定であり、精神疾患かどうかを把握する検査内容とすることは想定していません。
-
ストレスチェックの結果を解雇の理由に使うなど、事業者が悪用するおそれはないのでしょうか?
-
ストレスチェック制度では、ストレスチェックの結果は、労働者の同意なく事業者に伝えてはならないこととされており、ストレスチェックの実施者や実施事務に従事した者に対しては守秘義務が課されています。また、ストレスチェックの結果を通知された労働者が面接指導を申し出たことを理由とした不利益な取り扱いを禁止する旨の規定が設けられているなど、事業者による不合理な不利益取り扱いがなされないような仕組みとしています。さらに、ストレスチェックの結果や、面接指導の結果などを理由として、不合理な不利益取り扱いがなされることのないよう、今後、労使や専門家のご意見を聴きつつ、指針等で不合理な不利益取り扱いに当たる事例などについてお示しすることを予定しています。厚生労働省としては、このような制度の内容を周知するとともに、事業者に対して必要な指導を行っていきます。また、ストレスチェック制度の主な目的は、労働者自身のストレスへの気付きを促すとともに、職場改善につなげていく一次予防にあります。労働者の健康確保のためには、労働者が安心してストレスチェックを受けることができる環境を整えることが重要であること等をしっかりと事業者に周知・啓発していき、制度の悪用がなされないよう取り組んでいきたいと考えています。
-
ストレスチェックは、すべての事業場が対象となるのでしょうか?
-
ストレスチェックの実施が義務とされるのは、従業員数50人以上の事業場とされており、これは、産業医の選任義務が課されている事業場と同じ対象範囲です。なお、従業員数50人未満の事業場については、当分の間、ストレスチェックの実施が努力義務とされています。
-
ストレスチェックは、従業員数50人未満の事業場について努力義務とされているのはなぜですか?
-
従業員数50人未満の事業場では、産業医の選任義務が課されていないなど体制が整っておらず、かつ、事業場の規模が小さいため、ストレスチェックの結果等の取り扱いに当たって、労働者のプライバシーに十分配慮した情報管理等を行うことについて懸念があるため、義務ではなく、努力義務としています。ただし、従業員数50人未満の事業場であっても、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することは重要です。
-
ストレスチェックは、すべての労働者が対象となるのでしょうか?
-
ストレスチェックの対象労働者は、一般健康診断の対象労働者と同じく、常時使用する労働者とする予定です。具体的には、期間の定めのない契約により使用される者(期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者)であって、その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であれば対象労働者となります。なお、派遣労働者については、一般定期健康診断と同じく、派遣元事業主においてストレスチェックを実施していただくことになります。
-
ストレスチェックは、どれくらいの頻度で実施すれば良いのでしょうか?健康診断と同様に、年に1回実施すればよいのでしょうか?
-
ストレスチェックの実施頻度は、今後、労使や専門家のご意見を聴きつつ省令で定めることにしていますが、健康診断と同様に、1年以内ごとに1回以上実施していただくことを想定しています。
-
健康診断のように、ストレスチェックの実施を外部機関に委託しても問題ありませんか?
-
問題ありません。委託により実施する際には、ストレスチェックの結果を実施者から直接労働者に通知する必要があり、労働者の同意なく事業者に通知してはならないことなどの点にご留意してください。
-
産業医がストレスチェックを実施することは可能ですか?
-
産業医がストレスチェックの企画・評価に関わり、実施者となる場合には問題ありませんが、産業医が実施者とならない場合には、その産業医に労働者の同意なく結果を提供してはならないこととなります。
-
外国人を雇用する場合、入管法上どのような制限があるのですか?また、その外国人が日本で就労できるか否か知るには、どのようにしたらよいのですか?
-
我が国に在留する外国人は、入国(上陸)の際に与えられた在留資格の範囲内で、定められた在留期間に限って在留活動(就労等)が認められています。したがって、外国人を雇用する場合は、就労させようとする仕事の内容が在留資格の範囲内の活動か、在留期間を過ぎていないかを確認する必要があります。
これらの在留資格や在留期間は、在留カード、旅券(パスポート)面の上陸許可証印、外国人登録証明書(在留カードとみなされる期間において有効)等により確認できます。
なお、それでも不明な点がある場合には、最寄りの地方入国管理局に照会し、確認する方法もあります。◎在留カード
出入国管理及び難民認定法の改正により、平成24年7月9日から新しい在留管理制度が始まりました。これに伴い、中長期在留者(※)に「在留カード」が交付されます。
※「中長期在留者」とは、以下のいずれにもあてはまらない人です。- 「3月」以下の在留期間が決定された人
- 「短期滞在」の在留資格が決定された人
- 「外交」または「公用」の在留資格が決定された人
- 特別永住者(「特別永住者証明書」が発行されます)
- 在留資格を有しない人
※新しい在留管理制度については、以下のホームページをご覧ください。
法務省入国管理局 新しい在留資格がスタート!
http://www.immi-moj.go.jp/newimmiact_1/index.html◎ 旅券(パスポート)面の上陸許可証印
在留期間の更新や在留資格の変更を行っている場合は、それぞれの許可証印が旅券面に押印されます。
その場合は、時系列的にみて最新のものを確認する必要があります。◎外国人登録証明書
これまで、日本に入国して在留することになった外国人は、90日以内に居住している市区町村に届け出て「外国人登録」を行わなければなりませんでした。登録した場合は、「外国人登録証明書」が交付され、16歳以上の外国人はそれを携帯しなければなりませんでした。在留資格変更や在留期間更新の許可を受けている場合は、外国人登録証明書の裏面にその内容が記載されています。
※在留カードとみなされる期間が定められています。その期間において有効となります。◎入国管理局 外国人在留総合インフォメーションセンター
TEL:03(5796)7112
-
日系人は就労に制限がないと聞きますが?
-
必ずしも就労に制限がないわけではありません。入管法において、日系二世、三世については、「日本人の配偶者等」又は「定住者」の在留資格により入国が認められることになっています。これらの在留資格をもって入国する者については、入管法上、在留期間は制限されていますが、その活動には制限は設けられていません。したがって、これらの在留資格を持つ日系人は、いわゆる単純労働分野での就労も可能です。
ただし、日系人であっても他の在留資格で滞在している場合には、その在留資格の範囲内での活動に制限されます。「短期滞在」や「研修」等の在留資格により滞在している場合は就労できません。
-
資格外活動の許可とはどのようなものですか?
-
資格外活動の許可を受ける必要があります。この許可は、本来の在留資格に属する活動を阻害しない範囲で付与されます。なお、この資格外活動許可について、在留資格「留学」「家族滞在」を有している場合は、就労先を特定せず、包括的に申請することができます。また、継続就職活動もしくは内定後就職までの在留を目的とする「特定活動」の在留資格をもって在留する又はこれらの者に係る家族滞在活動としての「特定活動」を有している場合にも、包括的に申請することができます。在留資格「文化活動」を有している場合は、就労先が内定した段階で個別に申請することになります。
-
留学生をアルバイトとして雇うことは可能ですか?
-
留学生は、資格外活動許可を受けた場合、アルバイトを行うことができます。したがって、その留学生が許可を受けているかどうかを確認し、許可を受けている場合はアルバイトとして雇うことができます。資格外活動許可を受けている場合は、パスポートに許可証印又は「資格外活動許可書」が交付されていますので、それを確認してください。留学生については、一般的に、アルバイト先が風俗営業又は風俗関係営業が含まれている営業所に係る場所でないことを条件に、1週28時間以内を限度として勤務先や時間帯を特定することなく、包括的な資格外活動許可が与えられます(当該教育機関の長期休業期間にあたっては、1日8時間以内)。なお、資格外活動の許可を受けずにアルバイトに従事した場合は、不法就労となりますのでご注意ください。
-
ハローワーク(公共職業安定所)では、外国人労働者を紹介しているのですか?
-
ハローワークでは、入管法上国内で就労が認められている外国人に対し、その在留資格に応じた職業相談、紹介を行っています。
-
「ブラック企業」ってどんな会社なの?
-
厚生労働省においては、「ブラック企業」について定義していませんが、一般的な特徴として、(1)労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す、(2)賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い、(3)このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う、などと言われています。このような企業に就職してしまった場合の対応としては、第一義的には会社に対して問題点の改善を求めていくことが考えられます。しかしながら、新入社員が単独で会社に問題点の改善を求めて交渉等をするのは現実的には非常に難しいと考えられます。したがって、問題点に応じて、外部の関係機関や労働組合に相談することも有効な手段と考えられます。
-
労働基準監督官は、どのようにして会社を監督しているのでしょうか?
-
労働基準監督官の基本的任務は、労基法、最賃法、安衛法等で定められている労働者の労働条件や安全・健康の確保・改善を図るための各種規定が、工場、事業場等で遵守されるよう、事業者等を監督することにあります。このため、労働基準監督官にはこれら法律により臨検(立入調査)権限を始め多くの権限が与えられており、これら権限を行使して監督を実施し、法違反が認められた場合には、事業主等に対し文書で指導し、その是正を図らせることとしています。
このような労働基準監督官の監督は、各種情報に基づき問題があると考えられる事業場を選定して行われています。例えば、労働災害発生の情報や労働者からの賃金不払、解雇等の申告・相談を契機として、また、問題が懸念される事業場等をあらかじめ選定した上で計画的に、監督が実施されています。なお、事業場のありのままの現状を的確に把握するため、原則予告することなく事業場に監督を行っているところです。
- 労働基準監督官の権限等
-
- 労働基準監督官には、労基法101、103、安衛法91、98、最賃法32等に基づき、事業場への臨検(立入調査)権限、帳簿・書類等の検査権限、関係者への尋問権限など多くの権限が与えられています。労働基準監督官は、これら権限を行使して、工場や事業場等に監督を実施し、関係者に尋問したり、各種帳簿、企画・設備等を検査し、法律違反が認められた場合には、事業主等に対しその是正を求めるほか、危険性の高い機械・設備等について労働基準監督署長が命ずる使用停止等の行政処分の実行を担っています。なお、臨検(立入調査)の拒否・妨害や尋問に対する陳述の拒否・虚偽の陳述、書類の提出拒否・虚偽を記載した書類の提出については、罰則が設けられています。(労基法120、安衛法120、最賃法41等)
- また、労働基準監督官には、司法警察員としての職務権限があるため、重大又は悪質な法違反を犯した事業者等に対しては、司法警察権限を行使して、刑事事件として犯罪捜査を行うこともあります。(労基法102、安衛法92、最賃法33等)
-
社長から突然解雇を告げられました。労働基準法上問題はないのでしょうか?
-
労働基準法では、労働者を解雇しようとする場合には、原則として、少なくとも解雇日の30日前に解雇の予告をする必要があります。解雇予告をしないで即日に解雇する場合は平均賃金30日分以上の手当(解雇予告手当)の支払が必要です。なお、解雇しようとする日までに30日以上の余裕がないときは、解雇の予告をした上で、30日に不足する日数分の解雇予告手当を支払うことが必要です(労基法20)。
したがって、こうした手続きが取られていない場合は、労働基準法上問題となる可能性があります。- 解雇予告の例外 1
-
解雇しようとする労働者が次表の(1)~(4)に当たる場合は、解雇日の30日前に解雇の予告をすることや解雇予告手当の支払をすることなく、即時に解雇することができます。
対象労働者 ※下記に当たる場合は解雇の予告等が必要です。 (1)日雇労働者 1ヶ月 左記の期間を超えて引き続き使用されることになったとき (2)契約期間が2ヶ月以内の者 所定の期間 (3)契約期間が4ヶ月以内の季節労働者 所定の期間 (4)試用期間中の者 14日間 - 解雇予告の例外 2
- 天災事変等のやむを得ない事情で事業を続けることができなくなった場合や、労働者の側に即時に解雇されてもやむを得ない事情がある場合には、あらかじめ所轄労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)を受けることにより、解雇日の30日前に解雇の予告をすることや解雇予告手当の支払をすることなく、即時に解雇することができます。
-
給料のことで就業規則を見たいのですが?
-
常時10人以上の労働者を雇用している会社(事務所、工場、店舗など)は、賃金に関する事項を含めた就業規則を作成し、労働者代表の意見を聴いて、その意見書を添付して所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません(労基法89)。
また、就業規則の内容については、常時各作業場の見やすい場所に掲示する等の方法により労働者に周知しておかなければなりません(労基法106)ので、就業規則を閲覧できるようになっているか会社に確認してみてください。- 就業規則の周知方法
-
労働者への就業規則の周知方法については、労基法上次のような規定があります(労基法106、労基則52の2)。
- 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
- 書面を労働者に交付すること。
- 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器(パソコン等)を設置すること。
-
就職面接の際に、仕事と関係するとは到底思えないプライベートな事項に踏み込んで質問され、すごく嫌な思いをしました。このような質問は許されるでしょうか?
-
企業には採用の自由が保障されています。また、採用面接のやり方について法律その他による特別の規制はありません。どのような態様で、どのくらいの時間で、どのようなことを聞いたり調べたりすることについての細かい規制はありません。しかし、応募者の基本的人権を尊重した上で、応募者の適性や能力のみを採用選考の基準とする公正な採用選考の観点からも、応募者の適性や能力とは無関係のことを聞くということは、家族状況や生活環境といった、応募者の適性や能力とは関係ない事柄で採否を決定するなどの就職差別につながるおそれがあります。面接を受ける学生や求職者の側からすれば、不利な取り扱いを受けるおそれを懸念して、そのような質問がなされたときに抗議することは困難かもしれません。そのような場合であっても、今後そのような就職面接が繰り返されないように、ハローワークに啓発指導を行うよう求めることができます。
- 企業の採用の自由の保障
- 憲法22条1項は職業選択の自由を保障し、また憲法29条は広く経済活動の自由を保障しており、民法の大原則である契約締結の自由が保障されています。その両者が結びついて採用の自由が認められます。したがって、使用者は労働者の採用の有無、採用基準、採用条件を、原則として自由に決定することができます。
- 法律その他による制限
-
使用者に採用の自由が認められるとはいっても全くの自由というわけではなく、法律その他によって一定の制限が課せられる場合等があります。
その代表例は以下のとおりです。
-
男女雇用機会均等法による性別等を理由とする差別の禁止
- 募集・採用についての性別を理由とする差別の禁止(男女雇用機会均等法5条)
-
合理的な理由がないにも関わらず、募集・採用に当たって、
- 労働者の身長、体重、又は体力を要件とする
- 転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすることの禁止(男女雇用機会均等法7条)
- 雇用対策法10条による年齢制限の禁止
- 改正障害者雇用促進法34条による障害者差別の禁止(平成28年4月施行)
-
男女雇用機会均等法による性別等を理由とする差別の禁止
- 公正な採用選考の取り組み
-
使用者が学生・求職者を採用するに当たって、どのような採用手続きをしなければならないのかについて法的な規制はありませんが、応募者である学生・求職者の基本的人権は尊重しなければなりません。このことから、就職の機会均等が確保されるよう募集・採用選考においては、公正な採用選考が行われることが求められており、本人が職務遂行上必要な適性・能力をもっているかどうかを採用基準とし、適性・能力に関係のない事由を採用基準としないことが必要です。
具体的には、本籍地や家族の職業など本人に責任のない事項や、宗教や支持政党などの個人の自由であるべき事項など、本人が職務を遂行できるかどうかに関係のない事項を採用基準とすることや、それらの事項を応募用紙や面接などによって把握することは、就職差別につながるおそれがあります。